注目の東松戸地域 歩いて探る街の魅力
はじめに
千葉県松戸市の東部に位置する東松戸地域は、近年特に注目を集めています。交通の利便性と自然環境の豊かさが共存する地域です。都心からのアクセスも良く、住みやすさと快適な暮らしを求める多くの方が移り住んでいるといわれています。
ちなみに2015年4月1日の人口は東松戸地区約6,800人、松戸市全体約483,000人、2025年同日のそれぞれは約10,200人、約501,000人で、増加数(伸び率)は+3,400人(約50.0%)、+18,000人(約3.7%)です。東松戸地区の人口伸び率(約50%)は、松戸市全体の伸び率(約3.7%)を大きく上回っています(松戸市統計書)。
この街をめぐって変化の状況を探るため歩いてみました。その中で街の魅力を見出してみたいと考えています。グーグルマップで今回の撮影ルートを示すと次のようになります。
注目される東松戸の特徴:交通の利便性
JR武蔵野線東松戸駅下りホームに電車から降りて見回してみると、南方面には北総線駅舎が目に入ります。手前には駅近くのビルにつながる通路が整備され、周辺地区と一体となっています。
上りホームには電車が入り、背景にマンションを見ることができます。
東松戸は、JR武蔵野線、北総線、成田スカイアクセス線が交差する「東松戸駅」を中心とした地域です。都心と千葉県北西部のアクセスを支える重要な役割を果たしています。
東京都心の主要駅(東京駅、新宿駅、品川駅など)までの所要時間を調べてみると40分~1時間程度でアクセス可能です。また、成田スカイアクセス線の利用により、成田国際空港へも約30分で移動できます。
なお、羽田国際空港へは京成成田スカイアクセス線、都営浅草線、京急線と直通でつながり、乗り換えなしの約1時間で行くことが可能になっています。二つの国際空港が一本の線で結ばれている利便性は世界各地とつながる離着陸を可能にしています。
JR武蔵野線ホームから改札口に向けて階段を下りていくと乗り換え表示が目に入りました。
改札口に向かうと、不思議な立て看板が気になりました。『「区東京都区内」「山山手線内」、切符は精算機をご利用ください』とありました。
切符の種別を気づかせるねらいでしょうか?
精算機への案内を促すため、とわかります。
「この看板が立てられたのはどうして?」
このような切符を持つ人びとが下車している、という事実がわかります。しかも相当数の人びとが切符をもって利用しているから案内をしています、と読み取れます。精算機の場所は「←」の方向と明示しています。
ただ、この看板について興味を感じたことがありました。このような切符をもって利用する人びとは東松戸地域との関係では、どのような鉄道利用者でしょうか? 居住者か、勤務地か、訪問者か、などのうちいずれかです。
いずれにしても東松戸駅下車の人びとは、東京都区内、山手線内と近いところにあるという認識があったかどうかという点です。どう思いますか?
改札口を出て、メインと思われる西口から広場を抜けて駅舎とその付近の景観を眺めてみました。
背景には高層のマンションが見え、駅周辺の開発が進んでいることを感じさせます。
駅周辺土地利用の特徴:駐車場
開発途上の様子は周辺の土地利用からもうかがえます。駅周辺には公共施設や商業施設、住宅街、駐車場などが広がり、駅から少し足を伸ばすと市民農園・緑豊かな公園なども点在しています。
駅周辺の開発は銀行や商業施設、マンションなどが道路沿いに整備されています。
交差点付近にはマクドナルドの表示が大きく掲げられています。さらに目を遠くに向け、駅から少し離れたところには緑の樹々が見受けられます。
低地と台地からなる松戸市の地形では、市街地化の区画整理された地区とそうでないところが、その土地利用によってある程度の範囲でわかります。
住宅地化が進んでいるか否かで、台地状の山林はそのまま残されている景観か、開発されているかです。東松戸地域はまだその途上にあります。
住宅地になっているところでは、マンション、戸建て、アパート、更地・未利用地などの他に駐車場があります。東松戸駅周辺では、これらの混在している景観が見られ、開発の途上にあることがわかります。
そのような中で土地利用の上で駅近くの有料駐車場には特徴が見られます。
鉄道高架下や周辺のところにある多くの駐車場は設置されている位置による料金差が目立ちます。その場所による料金は駅からどのくらい離れた位置にあるかによって微妙な差があります。
現状では、JR武蔵野駅東口に直結したところにあるスーパーマーケットマルエツ駐車場の「最大24時間1000円」が最高額になっています。
JR武蔵野駅下にあるスーパーマーケットマルエツの別出入口に近いところでは800円となっています。駅舎東口駅前の土地利用は、本来広場や商業施設・マンションなどが見込まれるでしょうが、この地域では駅に直結する駐車場が市街地化の発展途上にある状況を示していると思われます。
さらに、北総線の高架下にある二つの駐車場では、駅から離れたところのわずかな違いによって差額があります。600円、500円の看板が隣り合わせて立っています。
駅周辺は、区画整理されたところとして公共施設、商店、新しいマンションや戸建住宅が立ち並ぶエリアになっています。街路樹が整備された歩道、生活に必要なスーパーマーケットやドラッグストアなどもあります。
駅直結の有料駐車場の状況からすると、今後の見通しは土地利用の変化が生じ、駅周辺の市街地化がさらに発展する余地を残していると思われます。
地域に残る自然の象徴:東まつど市民農園
東松戸の大きな魅力のひとつは、豊かな自然環境です。東松戸駅から少し離れたところに足を運ぶと、樹々の多い山林や畑地になっている台地への坂道が開かれています。
ここからは東松戸駅から東まつど市民農園に向けて歩きながら、付近の景観とその状況を探ってみました。
東松戸駅から南方面に5・6分歩くと山林が見えてきます。看板にはアパート、マンション、駐車場の案内がありますが、ここから先は市街化区域から外れたところになります。
さらに進んでいくと道路も舗装されていない私道となり、畑地が広がっています。今後は、都市計画についてのガイドラインが示され、調整区域も市街地化を見据えて開発が進んでいくと思われます。
山林から北の方向を眺めると高層マンションを眺めることができます。
東松戸駅東口から南方面に200m以上歩いてから東方向に左折していくと、市街化区域と調整区域の境となる道路になります。
その道路を歩くと調整池の近くに市街化区域内になる道路左側に弁財天があります。弁財天は昔からの社が新設された立派な台座に鎮座されています。
弁財天を過ぎ、道なりにおよそ100m歩いて右折すると、特別養護老人ホーム前に畑地が広がっています。ここが「東まつど市民農園」です。
約160の区画が現在約100人の市民に貸し出され、家庭菜園や花づくりを楽しむ場になっています。
大きな木の下に市民の皆さんが集う場にテーブルや掲示板が用意され、近くには水道も引かれています。
この場には農場オーナーより管理を委任された方をはじめとする世話人に当たる元農家の方々がほぼ常駐しています。この農園を利用する市民のみなさんに野菜作りのアドバイスや相談に乗るなど協力しています。
世話人の方からは、利用希望者が多く、順番待ちの様子で活況を呈していると聞いています。
中には近くのマンション居住者も利用し、地域住民交流の場として時にはバーベキュー、花火などのイベントもあると話します。この農園を訪れた時にも、マンションに住まう京都出身の若い親子が交流の輪に加わり、子供たちものびのびと楽しそうに過ごしていました。
農園の運営体制がしっかりと確立され、市民のみなさんの家庭菜園や花づくりを楽しんでいる様子は伝ってきます。
世話人の方々がいくつかの体験談を時々に笑いながら話してくれました。
「自分の家は市街化区域からわずか50mほど外れているので、土地利用の扱いに雲泥の差があったね。区域内の人は、今ではアパート、駐車場と景気のいい話だよ。自分は米と枝豆などを主に生産していた。開発の途中では東松戸駅前のロータリーにあたるところに畑があったので、作業を終えてトラクターに乗って帰宅する際には泥の付いたタイヤ跡の処理をするのにとても困ったよ。」
「連日、日差しが強く、雨も降らない日が続いたが、農園に畑作業に来る市民のみなさんはそこにある水道の前に長い列を作って並んでいたよ。それを見ていたわしらは、何度も何度も並ぶ人たちに、そう毎日、水やりをする必要はないよ、とよく言ってやったのだが、なかなか“水やりの心配” はなくならなかったね。」
「この農園の状況をよく見てください。どの畑も雑草らしきものが見当たらないでしょう。そして、そこの駐車場も見てください。造成や整備の際によく手入れをしてくれています。普段からオーナーは状況を見て市民のみなさんが困らないように草取りなどをよくしてくれています。それに近隣の農家が栽培した梨をはじめとする農作物の直売もそこでやっています。近場の人たちがよく買いに来ています。盛況で、人気がありますよ。」
大きな木の下で集まっていた方々に聞き取りを終えて、撮影の許可を求めました。
「写真撮影をさせてほしいのですが、よろしいですか」
と管理をする世話人をはじめとする方々に尋ねたところ、
「いいよ」
との返答とともに、一人の方が近くの実の付いた木に近寄って、落ちていた、熟した「実」を拾い集めながら、
「これ『ポポ』というだ、熟したから台風で落ちたのだ、もって帰りな。だれかビニール袋はないかね。」
と世話人が尋ねると、近くにいたマンション居住者の方がすぐに車から袋を用意してくださいました。その連携が実に見事で、自然な感じでした。とても心地よい感じを受け止めさせていただきました。
その熟した実「ポポ」(次の写真です)を知らなかった私は、さっそく帰宅して調べてみました。原産地がアメリカ合衆国の東部(インディアナ州、ミシガン州、ケンタッキー州など)で、日本には明治時代に渡来し、戦前には家庭の庭で栽培されていたこともあり、戦後の食糧難の時代には主食代わりに食べられたこともあるそうです。
この「東まつど市民農園」は東松戸駅から歩いて約9分(約650m)のところにあります。
都市生活の中で自然と触れ合い、自分たちで作物を育てる喜びを味わえる人気の施設として、地域住民の皆さんが気軽に交流できる場になっています。
東松戸地域における「東まつど市民農園」は、新しい地域形成の場として「自然の象徴」と感じました。
近年、再開発や新しい住宅地の整備が進み、東松戸の街はさらに魅力を増しています。これからも、自然と都市機能が調和した住みやすい街として発展し続けると思います。
まとめ
東松戸は、交通の利便性と自然の豊かさ、充実した生活環境が融合する魅力的な地域です。歩いて気付いたことや写真を通じて、その多様な魅力や、日々の暮らしの様子を伝えたいと思いました。これからの発展も期待される東松戸です。この後も同地域におけるいくつかのテーマに取り組む予定です。
<石橋>