東松戸地域の魅力 <スローライフのすすめ>

はじめに -景観と人の思い-
松戸市には低地と台地からなる自然環境があちらこちらにあり、東松戸地域ではずっと昔から人びとが移動しながら暮らしをした跡があります。
その証は旧石器時代に関場遺跡が台地縁辺部の河原塚374-3という場所で発掘・報告され、明らかになっています。ナイフ形石器などの石器製作跡と縄文時代の狩猟用落とし穴が確認されました。東松戸駅から北へおおよそ約2kmです。
千葉県松戸市関場遺跡sitereports.nabunken.go.jp
この遺跡は、旧石器時代から縄文時代にかけての人類の活動を示す重要な遺跡で、都市計画道路建設に伴う発掘調査によって発見されました。これ以降の遺跡も、北総鉄道の敷設など今日の大規模な地域開発に伴って付近にある台地上の山林や森で暮らした人びとの跡が報告されています。
これらをもとに東松戸地域にある低地と台地で暮らす人びとは、その後、豊かな自然というこの特徴を活かしながら、時代の変化とともに様々な足跡を残し、地域景観などを引き継いできています。
今日では、行政・地権者の連携やボランティアの推進、市民活動の場として活用されています。
この地域に暮らしてきた旧石器時代の人びとから今日の人びとまでは、かなりの長い年月の時間が経過しています。
その間でも、時代に応じて少しずつ変化がありながら、大筋ではその見てきた地域の景観は、近年の大規模な開発前とさほど変わらない自然景観の状況と受け止めています。
開発の進んだ中でも山林や森の残る東松戸地域の状況をもとに、人びとの暮らしぶりについて取り上げてみたいと思います。
これまでに東松戸地域を歩いて、地域のことがらや状況などから探り得た魅力を見出してきました。交通の利便性と豊かな自然を特徴とする地域景観の具体場面です。
その環境における「里やま保全活動」の具体的事例や個別的な人の関わり、思い、印象などを整理します。これによって自然と関わるスローライフの様子が明らかになり、魅力あるライフスタイルとして選択されやすくなると思われます。
このような活動の様子を東松戸地域のイメージアップに役立てたいと考えています。
地域の景観
私たちの歴史には自然と関わりながら定住的な暮らしをするようになった時期があると言われています。
東松戸駅から南西方向に歩いた台地縁辺のところに有名な中峠遺跡があります。北総線沿線にある中峠遺跡は、この地域の中では縄文時代中期の知られた遺跡の一つとされています。

この遺跡は、代表的なことがらとして人びとの食生活に欠かすことのできない土器づくりにおいて独自な型式(中峠式)が編み出され、特徴をもった遺跡として名が知られています。
この地域やこの知られた遺跡に限らず、主に縄文時代前期以降には山林や森を移動しながら食料を確保し、住み着いて村をつくる暮らし方が定着してきたと言われています。
この地域でも、縄文時代以降、長い間に低地と台地の暮らしで人びとの様々な取り組みが継続的に重ねられ、各時代のそれぞれに生活の仕方や文化を築いてきています。
そういう歴史においてこの地域に敷設された北総線は東京都心へ向けて起伏のある台地状の地形のところを通されています。この開発がそれまでの地域景観を大きく変化させています。
いくつかの事例を挙げながら、その跡や特徴とする地域景観の様相を辿ってみます。
東松戸駅から南西方向の中峠遺跡のある高いところを越えて北方面に位置する「古民家『旧齋藤邸』」に向けて歩きを進めながら、各所を写真に収めてみました。
まず、比較的低いところの北総線下を通り、少し上りながら歩いて畑近くの道路に出ると、根之神台(縄文中期)遺跡の表示がありました。おそらく時代の変化とともに山林の開拓が行われ、畑地化が進んだと思われます。

その畑近くの道路を進んで、振り返って中峠遺跡の方面を眺めると、畑地・送電塔・山林の景観が広がっています。同じところに立ったつもりで畑地以前の土地はどのような景観であったかを想像してみましょう。

これまでの東松戸地域が辿ってきた歩みが、明治初め頃に日本の陸軍参謀本部陸地測量部の作成した地図として発行された「迅速測図」と近年(2019)の「国土地理院2万5千分1地形図」の対比図(出典:「農研機構農業環境研究部門」)を見ると、想像しやすいかと思います。

写真に写っている「送電塔」が、国土地理院地形図には東松戸駅から東京方面に向けた北総線の通されたところの北側に記号としてあります。
明治初期の「迅速測図」でその付近は、土地の同じ高さを示す線で描かれた高低のあるところとして土地が広がっていることを表していると思われます。おそらく台地縁辺部と見られる山林か、あるいはすでに開拓された畑となっていたかと想像されます。
明治初期の「迅速測図」によると、東松戸駅の設置されたところの台地縁辺部には、黒い印が点在し、以前の小さい規模と見られる集落があります。
東松戸駅から歩いて約13分、北西方向にある「古民家『旧齋藤邸』は、平成29年に国の登録有形文化財に登録されていますが、主屋は、明治34(1901)年に建てられたものとされています。
古民家「旧齋藤邸」www.city.matsudo.chiba.jp
今日の写真でも、その様子から屋敷林をはじめとする周辺の山林が多く、明治期の当時についても、旧齋藤邸の周辺景観は、山林の分布が広がっていたと見られます。


「紙敷三つの森」のボランティア
東松戸地域は住宅地開発の途上にありますが、山林や人手の入った森が点在しています。
その中には、これまでの小稿において紹介してきました「紙敷三つの森-石みやの森・みなみの森・野うさぎの森」があります。
おそらく旧石器時代からずっと続く台地に山林や森が今日まで生態系の変化を生じながらもその景観を保ち続けています。
その豊かな自然のある地域環境に開発の大きな波が押し寄せている現代的課題のある現状に対し、行政・地権者の連携とボランティアの推進、市民による『松戸里やま保全活動』は大きな意義を有しています。
この活動は、今日の地球的規模の環境問題という視点にも対応するばかりではなく、これまでの小稿で取り上げてきた「スローライフ」のテーマにも重要な意味があると考えています。
活動に参加されている会員みなさんの貴重な思いや記憶、印象、余韻などに焦点を当て、地域における活動とライフスタイルについて取り上げてみたいと思います。
ボランティア活動の推進と人の思い
「紙敷三つの森-石みやの森・みなみの森・野うさぎの森―」においてそれぞれの活動母体となっている会の皆さんに、今回「活動を通して思うこと」について、お手数をおかけして『会員の一言』として寄せていただきました。
会員の皆さんが日ごろの活動を終えられて、少し時間を経てからの思いをまとめていただきました。活動の場で見つけ直したことや感慨、気づき、新たな目標などの様々な思いが刻まれ、それぞれの方々にご自身のライフスタイルを感じることがあったのではないかと受け止めさせていただきました。
それらの記憶・印象や感情・余韻などが残る「東松戸地域の森」についての、地域性のある体験談を次のように整理をしてみました。
① 里やま保全活動の動機・参加・誘いと仲間・付き合い
・長いサラリーマン生活を終え今、信州との二拠点生活のマネゴトをしています。
友人Aさんに誘われ居場所を求めて里山活動に参加、定年後10年程、市の教委のお手伝いをしておりました。(K.I.)
・私が「樹人の会」に参加して早10年が経ちました。あっという間です。月に3回ほど気が置けない仲間に会い雑念を全て忘れ活動することで心が裸になれます。(S.K.)
・特にお昼のお弁当を食べる時 遠足に行った気分になれるので、楽しみなのです。感謝、感謝(M.K.)
・はや、10年。もうそんなになるのか。初対面の人が集まり始まった。ほとんど素人。ただ皆森が好きで、みんな仲良く活動している。マラソンランナー、音楽家、工作の名人、本物の建築士、いろいろなのがあつまったけど、みんな仲良く続けたいものです。(Y.A.)
・もともと私の妻が会員のこの会に、顔を出させていただいている間にお誘いいただき、今、会員として活動させていただいています。誘っていただいた会員の方から、「楽しく活動することが大事」と言っていただき、その言葉に甘えて今に至ります。(T.U.)
・リタイアして初めて知った森の活動・・・これが「もと」で長野の山の中へ行くこととなり、夢中で過ごした10年間。(T.K.)
・8年前脳梗塞で倒れた家内の老老介護、心が折れそうになる中で「樹人の会」の活動を知り入会。(T.K.)
・最初は草や木、森や林、土に触れていたいという思いで参加しました。しかし何よりそこに集まっている仲間と一緒にいることが今は楽しいのです。(M.N.)
・何よりも技を伝え合うあたたかい交流にあると考えています。森活、オススメです😊(K.N.)

② 現状
・2015年に28名でスタートしてから10年が経ちました。木々の合間から差し込む木漏れ日の中、東松戸の1.8haの森で水曜日と日曜日に活動しています。(K.M.)
・田舎の山里育ちの楽しかった私の学校生活と違い今のストレス社会の、不登校、教室に入れない児童が増加している現実に危機感を抱きます。(K.I.)
・この10月で10年目になる野うさぎの森🌳 私有林の間伐がおわり、教育的活動が活発になっています。(K.N.)
③ 子ども、訪問者、仲間、自分の楽しみ・喜び・表情
・先日、野うさぎの森に要支援の児童集団が里山体験をした時に活動中の楽しそうな彼らの瞳をみるにつけ、昔の自分の学校生活を思い起こしました。(K.I.)
・皆さんと一緒に汗を流して活動し、森がきれいになる、森に来てくださる方々の喜ぶ姿を見ることができるのが、とても嬉しいと思える日々です。(T.U.)
・森には訪れるたびに新たな発見があります。春は可憐な草花や木々の新緑、夏は昆虫や小鳥の数々、秋はキノコと紅葉そして冬は雪上の野うさぎや小動物の足跡etc. 鳴呼、森はなんて楽しいのでしょう!活動の中で一番重要なことは、なんといっても「森を楽しむこと!」ではないでしょうか?(S.F.)
・里やま活動について;先ずは楽しいという事。草を刈ったり、穴を掘ったり、木を倒したり切ったり、一緒に小屋を造ったり、そして一番の楽しみは皆でのお茶やお弁当の時間です。笑いや笑顔がいつも絶えず、何のしがらみもなく、ただ笑っていられるその時間がとても幸せです。(M.N.)
・自然環境の松戸の森を訪れてくれる人々の笑顔、子どもたちの歓声が我々の次への活力となり、安心して楽しんでもらえるよう竹林・樹木の伐採や苗の植栽、遊具の製作、歩道の整備などを行っています。小さな森も四季折々異なった表情を見せます!年齢を問わず多くの人達にこの東松戸の森を訪れ観察していただきたいと思います。(K.M.)
・東松戸に残された貴重な森には、子ども達が遊びに、中高・大学生らはボランティア体験の場として活用されているが、彼らの笑顔が活力となり、木々の移ろいに癒される。(M.S.)

④ 学びの場・自分自身の成長・自己啓発
・私は 森の事も 鳥の事も 昆虫の事も 花の事も 動物の事も 何も知らずに この森に来てしまいました。そして 知らず 知らずに今までになっています。樹人の会の人達 みんながお互いに敬って仕事?趣味?をしているのを見て 勉強?させてもらっているようなものと思っています。色々学べる所があるというのは楽しいものです。(M.K.)
・楽しさの中に厳しい自然相手の大変さを学んだ気がしています。森の活動に夢中になれる自分を発見、癒されています。ありがとう!(T.K.)
・私は2018年4月人間ドックにてPSA112.4という数値、その場で前立腺がんとの診断、その後の精密検査で肺・リンパにも転移しているという状況でした。しかし今ではPSA数値0.008です。全く自分が癌とは感じていません。ドクター曰く「薬も効いていますが、一番の薬は、森でのボランティア活動でしょう。今後もぜひ続けていってくださいね」。少々体調の悪い時でも森に来ると不思議、体も動くし気分も爽快。私の健康の秘訣は森での活動です。里やまボランティア、活動して良かったと思っています。(M.N.)
⑤ 自分の居場所
・いまだに小さなことしかできませんが、自分にとって大切な時間を過ごさせていただいている、大切な場所です。(T.U.)
・森の活動を定年後の一つの居場所として位置付け、各自が持てる能力を存分に発揮できることは素晴らしいことだと思います。(S.F.)
・私はここで過ごす時間が何よりの心の癒しとなっています!(K.M.)
⑥ 先輩への敬意
・野うさぎの森は今年で10年目を迎えました。私は中途入社?でまだ5年しか活動しておりませんが、現役時代の様々な背景を持った森の先輩たちが「森が好き・自然が好き」という共通点で一堂に会し、現在の状態にまで森を整備されたことに敬意を表します。(S.F.)
・樹人の会に参加して2年になります。私が一番感じることは、体力のなさです。若輩者でありながら先輩方に比べ、少し作業をしただけで、へばってしまうことにショックを受けています。仕事を持っているため活動が疎かになっていますが、先輩方を目標に体力を付け末永く活動を続けていきたいと思っています。
⑦ 地主さん・仲間の理解・協力・感謝
・地主さんの協力も忘れてはならない。会報「イチニイ通信」には必ず返信をくださる。(Y.A.)
・秋は地主さんのご好意により、栗拾いに参加できます。ぶどうを作っているメンバーや、さつまいもを作っているメンバーもいて、森林ボランティア活動の後は、お土産たくさんあります。(K.N.)
・長い間、個性豊かなメンバーたちがのびのびと活動できたのは、ひとえに地主さん(2軒)が暖かく見守ってくださったからだと思います。(S.Y.)

⑧ 目標
・このような森の体験をもっと広げられたらと思いました。軽井沢に新しいコンセプトの学び舎が出来た話とか田舎留学の話も聞きます。多様な教育の一部に里山活動が役立てたらなと感じます。(K.I.)
・ふるさと松戸に残された森を潤いのある貴重な空間として後世(大げさですが)に未来永劫残すため、微少な活動の一部だと自負している次第です。(S.K.)
・私も微力ながら「松戸の緑」を次世代に繋げるべく活動を続けたいと思っております。(S.F.)
・歓声が響くこの森が次の世代に引き継がれることを願い活動を続けたい。(M.S.)
⑨ その他
・野うさぎの森は元気と笑顔があふれている場所だと思います。しかし、緑保全活動というよりも⋯どんどん変化していく様子に戸惑う方が多い今日この頃です。(K.U.)
この度、会員の皆さんに貴重な思いを寄せていただきました。
心より感謝いたします。ありがとうございます。
お陰様で、東松戸地域の「松戸里やま保全活動」に関わる方々の率直な感慨、印象、余韻などを伺うことができました。
「スローライフ」を味わいたいと考える、この地域で暮らす方々や移住を予定する人びとにとって、これからの参考になるのではないかと思います。
まとめ
松戸市に残る「森の景観」は、ずっと昔の旧石器時代から脈々と続いてきています。
大都市江戸・東京に近い松戸市にあって東松戸地域は、近年までその景観が比較的多く見受けられました。
その地域性は、交通利便性を求める社会の動きから北総線の開通と土地開発によって大きく様変わりする住宅地へと変化してきています。
その東松戸地域は、この交通利便性と森の残る自然景観を有することに特徴があり、これに結び付いた魅力が随所に見られています。
その魅力は、この地域に暮らす人びとの「ライフスタイル」として地元の方々とつながり、一緒になって自然と関わる「スローライフのすすめ」にあると思います。
具体的には「市民農園」、「結いの会活動」、「松戸里やま保全活動」などです。
これらの地域活動は、「東松戸地域のイメージアップ」につながり、松戸市全体への好意的な印象を醸し出す雰囲気づくりになっていると思われます。
このような活動を支える方々の活躍、自然景観と調和した地域のさらなる発展を今後も期待しています。
<石橋>


