松戸市 矢切地区 「空・川・道の駅」提唱案 受け入れる or 受け入れない?
はじめに
常磐線は東京都内を流れるいくつかの河川を越えていきます。江戸川に架かる鉄橋に差し掛かる車窓からの眺めは、広々とした低地につながる樹々の豊かな森林が目に止まります。
松戸市方面の視界が開けます。都心から金町までの景観とは異なるものです。
何度も乗車したことのある多くの人は印象として留め、心に残る「心象風景」となっているのではないでしょうか。
「旧校舎の中部⼩学校跡地に建った伊勢丹松戸店が消え、松戸の活況に陰りが見られる」のつぶやきから、松縁会(松戸をゆかりとする人の会)の活動はスタートしました(HOME - 松縁会)。
かつて「ランドマーク」として遠くから視界に入ったデパートの展望台は今も残っています(2025.3.18現在使用されていません)。
この景観を目にする私たちは、何とか元気な松戸を取り戻したいと活動を進めています。『松戸再興』(「松戸最高」「松戸最好」)です。
「都市計画」をめぐって
松戸市が高度経済成長期に活況を呈していた時以降、周辺の地域事情に変化が生じています。鉄道網や高速道路等の交通、エネルギー・コンピュータなどの技術革新をはじめ、あらゆる分野での社会的変革の渦中にあり、自治体間の競合関係もあります。
松戸市においても2022(令和4)年4月に松戸市都市計画マスタープランの改定を行い、松戸市「都市計画マスタープラン(市街化調整区域編)」が2024(令和6)年3月に都市計画審議会によって最終案が答申されました(松戸市都市計画マスタープラン(市街化調整区域編)|松戸市)。
現行の都市計画法は、1968(昭和43年)の制定で、市街化区域と市街化調整区域が定められました。
無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときに定める区域です。市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域として定められました。
松戸市は、1970年にその法律の概念を取り入れ、それ以来の土地利用を守ってきたという都市計画審議会委員の評価もあります(「第153回審議会議事録」)が、他方、市街化調整区域内における市街地化の現実問題も進行しているという意見も出されています(第154回審議会資料「パブリックコメント」)。
その後、2025(令和7)年4月に、「市街化調整区域における地区計画ガイドライン」が定められ、【市街化調整区域の地区計画の適用区域・適用候補地】として「矢切地区」が唯一の対象地になっています。
これまで半世紀にわたって都市計画の調整区域として保全されてきた地区が、やはりこの延長で「地区計画」の取り扱い対象になっている意味を探る必要があると思われます。
丁寧な審議を重ねてきている都市計画審議会の議事録とこれを支える市役所担当課の見解を読んでみると、その経緯における歩みを推測することができます。
矢切地区の特異性
矢切地区は、江戸川を挟んで東京都と接し、かなり広い低地と斜面林のある台地が江戸期からの市街地につながっているという、極めて特異性のある景観があります。
この地域イメージは、他のところでは見かけることが少ないユニークさがあり、「矢切の渡し」や「野菊の墓」などの観光名所とともに周知の事実とされています。
そのため、現都市計画法の制定以降、矢切地区は調整区域における景観や自然の大切さが保たれてきました。また、今なお地球環境的な視点から、市内外のみなさんの地区における農業的土地利用への期待・願望も大きいことです。
行政サイドにも、坂川の河川整備や広場、築山などの基盤造成、駐車場や公園への道路、給水設備、外周道路と、矢切の渡し公園の整備などを図る方向が見えてきました。
矢切「調整区域」の現状
この地区において農業を生業としてきた農家や土地を所有するみなさんは、時代の変化に対応することを求められています。
この地域で暮らしてきたみなさんの立場を十分に理解し、寄り添う方向を見出す必要があります。
その現状は、今日の土地利用の状況を眺めてみると、その様相をはっきりと読み取ることができます。
シラサギの飛来と耕作者の姿、耕作放棄や未利用地の実態、農業外利用地(資材置き場・産業廃棄物処理施設など)の散見、住宅地化などが混在している様子を見ることができます。
行政担当者による「土地所有者意向調査」も行われ、「概ね10年後の土地利用」について報告されていました。
「現状のまま」との回答が 一番多かったものの、田畑・果樹園を所有している方は、他の用途と比較して「売却したい」との割合が高い結果となり、まちづくりの方向性としては、道路等のインフラ整備、メリハリのある計画的な土地利用を望む声が多いと報告されました(「第154回審議会議事録」)。
議事録を読むと、すでにこの地区では、先行きの事業を見越して土地所有者が事業関係者と「物流倉庫」向けの事前契約をしている動きがある、と見られています。また、「パブリックコメント」にも、国道6号線や外環自動車道へのアクセスの良さから賛同意見が寄せられています。
このような意見に賛否の理由や論拠など様々な議論があります。これらに向き合うに際して行政の考え方は慎重な対応として、「物流倉庫」案には一言も触れていません。20年後を見据えて地区の特性に応じた土地利用の計画案を打ち出し、その打開策が「市街化調整区域における地区計画ガイドライン」に示めされました。
地域イメージの向上へ
矢切地区のつながる松戸市街地を含めて、他地区も低地と台地の近接する松戸市は、江戸川を挟んで東京都と隣接します。
その近接性・場所性の地理的な特異性は、景観・自然の優位性だけではなく、人びとの暮らし向きの将来性を開いていくことにつながると思われます。
これまで松戸市は「東京のベッドタウン」として多くの人びとが通勤・通学などで江戸川を越えて行っています。今もその働き、学び、娯楽文化など東京へ移動する傾向は変わらないですが、逆に多大な人口を抱える東京からの人びとの還流的誘致を図ることも必要と考えています。
矢切地区の「地区計画」案の作成にあっては、東京からの人の移動が、事業、観光、インバウンド、スポーツ練習・大会、芸術文化鑑賞・発表などの場で展開されることが望ましいことです。矢切地区の特異性が発揮されることは、松戸の「地域イメージ」の重要な柱として位置づけられ、松戸市全域の特異性とも重なるものと理解しています。
地区計画案の背景
“20年後の将来を見据えて”という言葉が行政サイドの説明として「パブリックコメント」で使われてきました。
矢切地区や松戸市内外の人びとに限りませんが、暮らし向きにおける20年の時間はだれも変わりません。
世の中の変化や進歩、地区・地域の変貌、事業者の状況、家族構成の形態、個人の生活などへの見方や考え方によると、人によって時間の使い方や概念は大きく異なることが予想されます。
これまでの矢切地区、松戸市が辿ってきた地域形成には長い歴史や文化があります。この中では「地域の特異性」がとても重要な視点ととらえています。松戸の先人は、かつての地球温暖化による奥東京湾の広がりを活かして暮らし向きの場を確保してきました。
気候変動の著しい昨今では、矢切地区の治水対策は安心・安全における優先的配慮を要します。江戸川流域としての暮らし向きは、自然の影響に限らず水運や鉄道の発達が松戸の盛衰に深くかかわってきました。
その上でエネルギー革命やコンピュータの発達などによる社会や交通機関の変化が及ぼす影響です。今もまたその時期が到来していると感じています。
ドローンや「空飛ぶクルマ」などの交通機関が社会に新たな変化をもたらすと予見されています。自動化された交通システムがある一定の段階を経て各地域に導入され、運用が開始されるのはいつごろになるのでしょうか。
そのステップに応じて10年から20年先に見通しを立て準備を始める時期に入っていると受け止め、矢切地区の特異性を活用する方向を打ち出すことではないかと思われます。
矢切地区は東京に近接し、「矢切の渡し」の歴史と文化に関わる河川敷の広さと松戸市街地につながっています。近場の河川流域ドローン輸送や「空飛ぶクルマ」の観光遊覧の基地にふさわしい条件を備えていると理解します。
「松戸ブランド」の普及促進を願って ―補説 ⑧― - 松縁会
「空・川・道の駅」の提唱案
具体的な土地利用の提唱案は、農業振興と「空・川・道の駅」「矢切の渡し公園」の建設・整備です。
地区計画ガイドラインの各項目に従って具体的な内容が求められますが、駅建屋の建築関係などの専門的判断もかかわります(例えば容積率200%の屋上駐車場・駐機場の可能性有か)。
ここでは、地区計画の類型が国道6号・外環自動車道周辺型とされていることに関して補充いたします。地域の農業振興との共存、周辺道路への交通負荷、景観との調和など周辺環境の配慮、浸水リスクに対する防災対策が重点とされ、産業振興に資する計画的な土地利用をすることによって地域の活性化を図ることが求められています。
提唱案は各地に見られる「道の駅」と同様なイメージですが、「空」と「川」の要素を取り入れた機能を合わせ持たせたいことです。特にドローンや「空飛ぶクルマ」の技術・しくみ・法的規制などは開発途上にあり、その導入方法は段階的に整備することの必然性があります。
ただ、地域の農業振興との共存は、農業経営への基盤整備を図り、近隣農産物の生産・販売・流通の役割を確立することです。これによって従来からの特異性を発揮することにつながるはずです。地区計画案は農業振興と土地転用化としての「矢切の渡し公園」整備・駅販売所建設やそれらの運営などの産業振興によって地域の活性化を目指します。
まして、ドローンや「空飛ぶクルマ」の新しい交通機関の導入は観光上の注目や、河川流域を利用した空輸方法では、試験的に導入する場合にも住宅地への被害防止に役立ち、同様に参入しようとする他地域との人・物流の拡大につながる可能性を秘めています。周辺道路への影響は比較的少なく、北総鉄道や「渡し舟」との利用を組み合わせにより、むしろ江戸川流域の新たな産業・交通・経済などへの波及が期待されます。
「駅の建屋」の形態・外観や面積、高さなどの規模は周囲の景観との調和に密接に関わります。ガイドラインの規制範囲内で検討することは必須ですが、屋上駐車場・駐機場が認められるならば、1・2階部分の検討内容に工夫の余地が大きく広がります。1階には浸水リスクも想定し、東京からの観光客・利用者の見込める空間広場(ダンス・BMXパフォーマンス、キッチンカーの場所など)、2階には販売所、レストラン、事務所・トイレ・休憩所などを設置する案も想定されます。
浸水リスクや周囲の景観との調和を図る上でカギを握るのが「矢切の渡し公園」、「駅の建屋」付近に設置するライブカメラの役割です。ライブカメラは、矢切地区の景観・風景を伝え、浸水リスクへの予防対応も可能にすることができます。その役割は、法的な規制の問題や予算措置との関係もありますが、設置場所と運用条件がうまく設定されるならば、個人の特定につながらない範囲のカメラワークで設置することです(通常は防犯カメラの役割とします)。
予防カメラに限らず、この地区のライブ映像に注目が集まるならば、参加者・競技者の意識高揚や近くの東京都からの参加者・観光客等を見込めることも想定されるのではないかと思われます。
アンケートのお願い
矢切地区は全国的に関心や注目があるところとして名前が知られています。
各地より得られている多くのみなさんによる知名度はとても貴重で、ありがたく大切にしたいものです。もっと松戸市のもつ好感度や魅力などに結びつけていけるならば、この地区の発展をさらに伸ばしていくことにつながると思われます。
各地区・地域から構成される松戸市全域の「地域イメージ」は、全国の多くのみなさんがより「矢切」を知って、関心を寄せてくださればもっと高まると思われます。
市民のみなさんがその高まりを感じ、さらに意識的に地元感覚や一体感をより強くもつことによって、各種の活動を展開するならば松戸市のさらなるイメージアップになるのではないでしょうか。
このような動きや情勢は、地域形成のさらなる力となって、再び元気で、にぎわいのある松戸市を取り戻すことになるのではないかと考えています。
松戸市にゆかりをもつ人びとや住み続ける市民のみなさんは、持続可能な社会を実現するために「まつどSDGs活動」を推進しています。この活動を共に進めていく上で、矢切地区の発展は、モデル地区にふさわしい動きとして極めて重要と考えています。より多くのみなさんがアンケートにご協力くださるようお願いします。
ご協力ありがとうございました。