東松戸の森を保全するボランティアの動機と世代

豊かな森のある風景が街と一体となって変わる東松戸の景観。
 
街の姿が変わるのは街が生きている証しである」とする見方があります。
人の暮らしにかかわる開発と便利さ・豊かさの追求の姿、街からの人口流出・減少と後の閑静さ・廃墟化などの対比から言われます(注)。
 
「市民の暮らす空間にとっての森は、何ですか?」
 
「里やまボランティア活動で活躍する皆さんの体と心を動かすのは、何ですか?」
 
ボランティア参加者の出身地や自然体験、森の継承・発展などへの思いを取材しています。 
東松戸の森について次世代への引継ぎに関心を持ち、ボランティア活動に参加する皆さんの思いや考えを伺ってみました。
これから数回に分けて紹介していく予定です。

街にある森

街にある森は多くが私有林・私有地です。
街の開発が進むと地権者の皆さんは、環境保全と生活向上の動きに直面します。

今、地球温暖化のきわめて重要な課題に誰もが対応を迫られています。
街にある山林は昔から自然景観や生態系の一部として重要な役割があります。

特に、従来の街にある山林では人手不足による下草刈りや間伐などが滞る傾向があり、放置林となって不法投棄のゴミ問題をはじめ管理上の様々な問題が指摘されています。

その状況下で松戸市では、2003年から地権者と行政の相互理解・協力・応援、「里やまボランティア入門講座」修了生のボランティア団体、市民参加が一体となって、現在18ヵ所で森の整備活動が行われています。

ボランティアの皆さんは「松戸里やま応援団」で組織的に活動しています。

松戸里やま応援団森の保全・整備を行い、市民のみどりへの理解を広げる場及び子どもたちの自然学習の場など、みどりと触れ合う機会を提供する活動をmatsudo-satoyama.org

それらの維持管理の多彩な保全活動を通じて都市環境の改善が図られています。

他方、森は私有地のため、普段は自由な出入りが制約されます。各地の活動日に開放され、森の緑は、ボランティアと市民にとって精神的な安らぎをもたらし、リフレッシュの場としても機能しています。

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私有地の森:活動日に出入り可能の案内

街にある森を身近に眺める市民の中には、ほっとする風景とも受け止める人もいます。日々の生活リズムに心地よい変化をもたらしています。

また、街の森は温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収し、空気を浄化するだけではなく、気温を下げる効果も期待されています。
さらに、集中豪雨時の吸収力を高め、洪水などを防ぐ役割もあります。

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「リラックス」を体験するオープンフォレストの日:石みやの森

東京近郊松戸市の森ボランティア

松戸市は、台地と低地に特徴があり、昔から人の行き交う結節地でした。
江戸・東京という大都市の近郊地との関係でも、人の交流や産業などの発展とともに街の歴史があります。
 
こうした街の森ボランティアに参加されている方々が、ご両親を含めてどのような地域のご出身なのか、筆者は関心を寄せています。
参加者の皆さんの思いには、出身地の自然体験や、親を含めた地域環境からの影響が関連している事例も予想されるからです。

地元出身者と各地から東京近郊地への移住者。
両者が相まって松戸市の自然景観と都市景観に恵まれた「松戸らしさ(ブランド)」を形成していくためには、世代間のつながりが重要なカギになると考えられます。
 
また、松戸市に継承されてきた森を次の世代にいかに引き継ぐかは地権者を含めて保全活動に参加するボランティアの皆さんに関わります。

森を次世代に継承する引き継ぎ方としては、まず地権者の意向が尊重されなければなりません。

次に現状の活動参加者の考えに加えて松戸市の「里やまボランティア入門講座」修了者が見込まれます。

各森の高齢化の事情や人のつながり方なども関連していると思われます。

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「一日里やま体験会」について説明する:松戸里やま応援団

さわやかな森に身を寄せ、仲間の皆さんと共に行動するボランティア参加者が先々についてどのような思いや心情をもって体を動かされているのか、気になるところです。

取材をお願いした方々には「引き継ぎ方」について触れていただきました。

叔父の思いを込めた声に応じる

宮城県栗原市在住の叔父が体験した事で「里山活動の大切さ」を知り、活動に参加しました。

叔父が初孫の為に「何を作ろうか」毎朝楽しみに見ていた「桐の木」が東日本大震災の後、盗難にあってしまいました。
 被災生活の中で庭の手入れもできず、荒れたままの状態で放置されていました。
そして、ある時、何者かによって叔父の「桐の木」が伐倒され盗まれてしまいました。

その話を聞いて、普段からの手入れの大切さを知りました。

松戸市の広報「里やまボランティア入門講座」12期の案内で、里山の自然を残すこと、森の整備の大切さを学習できる機会に「コレだ!」と思いました。

のこぎりやチェンソーの使い方、森の整備に必要な学習が行われました。

 その講座で千葉大学園芸学部の柳井先生のお話の中で木の役割を知りました。

「イヌマキは防火樹としてお寺の周りに多く植えられている」
「防風林は生態系保全などの役割も担っている」
「大きく深くはった根は地盤を固め安全な暮らしを支えることにも繋がっている」
とても感銘を受けた内容でした。

12期のメンバーで「樹人の会」を立ち上げ活動を続けています。

活動に参加する中で、夫<T・U>が送り迎えをしてくれていましたが、ある時、仲間の方が一緒に活動しませんか、と声掛けをしてくださいました。

夫も私も、東京生まれで育ち、共に現役で働いていますが、夫も私の活動ぶりに関心を示してくれていたので、参加するようになりました(この日も共に栗林の枯れ木拾いをしながら、時々話の場に加わり活動の様子を伝えていました)。

次世代の子どもたちには、筍堀りや栗拾いなど、自然に親しむことをなるべく多く体験してほしいですね。
松戸市にある森をずっと残していきたいです。一人でも多くの人が「松戸のみどり」と関わりをもち、自分たちの暮らしの中に自然を位置付けてほしいと願っています。

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森に親しむオープンフォレストの日:野うさぎの森

宮城県の叔父に「松戸の里やま保全活動」の様子を画像などで紹介することがあります。

最近、「熊出没」のことが話題になっていますが、叔父は「近年、里山の手入れができていなくて、熊との共存関係を維持するのが難しくなっている」と話しています。
昨年には「柿の木を切り倒す」地域作業をして熊対策をしていると、半ば嘆き悲しんでいる様子でした。

さらに、続けて「松戸の方々は年配者がたくさん活躍しているよね。自分も77歳だが、どうしたらこちらの地元でも同じような活動ができるだろうか」と対策に苦慮しています。<「K・U」「T・U」>

先を見据えて11期先輩方に加わる

会社定年後の生活を見据え、どう過ごすかを考えていた時に、「里やまボランティア入門講座」が週末開催されることを知って21期講習会に参加しました(2023年)。

当初は新規の森でのスタートを目指しておりましたが、11期「紙敷みなみの森」に有志10人ほどで入会させていただきました。
現在、24名で活動していますが、60歳以下の現役就業中の方が10人弱いるほか、夫妻で参加している方など多様なメンバー構成です。

私は、会社員の親のもとで、大阪、名古屋、東京で育ち、自身も会社勤めでしたので、転勤が多く、地方も含め多くの街を経験してきました。

松戸市には社宅に入り、定年後も住み続けることになりました。
自然に関わることでは、プランターながら野菜を植え、つまみ食いに展開しています。
また、40代の頃に同僚に誘われて登山を始め、時間を見ては各地の山に出かけています。 

みなみの森の地主さんは里やま保全活動に理解があり、「火の使用をしない」ことを守ってもらえれば、会員間で相談しながら自由に森の活用をしてよい、との考えを頂いています。

11期の先輩方は、お互いが拘束されず自由に活動することを基本にして運営を続けてきました。
近年、森を「ゾーニング」する考えのもとに、森をある程度区分けし、興味や関心のある分野に活動する人をまとめる方向にあります。

代表役を引き継いだ私は、思いつきで進めず、「少し先を見た計画の上の実行」が必要と考えています。

先輩方の「拘束のない自由な運営」と折り合いよく調整すること、若い人も含めてそれぞれの意見を聞きながら情報共有し、季節の変化の維持や竹細工などの技術を引き継ぎ、楽しむ文化として森の活動を進めていきたいと思います。<A・S> 

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竹林脇の受付を通るオープンフォレストの日:みなみの森

まとめ


今回は、主に東松戸地域の森で「里やま保全活動」のボランティアをはじめられた方の「里やまボランティア入門講座」への参加動機を取り上げています。
 
2003年から地権者と行政の理解・協力のもと、松戸市が「里やまボランティア入門講座」を開催。ここに参加した修了生が中心となってボランティア団体「松戸里やま応援団」を立ち上げて活動を続けてきています。

市民のイベント参加もあり、一体となった活動が展開されています。ボランティア精神のあふれる人びとの手が入ることで松戸市の活力豊かな自然環境が守られています。

現在、18か所の森で活動が展開されていますが、森を保全するボランティア皆さんの次世代への引き継ぎに目を向けることも必要となっています。

そのために今回は、「森」の保全と魅力をアピールするボランティア皆さんのボランティア活動をはじめる動機について述べられた方々の声に注目してみました。
 
「台地と低地の都市」という独特な地形をもつ松戸市にとって、東京近郊地のメリットを活かして東松戸地域の「森の景観イメージ」を大きく発展させていくことは『松戸ブランド』普及の重要なカギになると考えています。
 
次回は、ボランティア皆さんの考えや思いに焦点を当て、いかに持続可能な「里やま保全活動」を展開していくのか、について取り上げてみたいと準備をしています。

<石橋>

<注>
久保田健太郎著「発掘所感5」『山梨新報』令和6年12月27日(金)

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