東松戸の森を保全するボランティアの出身地と自然体験

東松戸の森で活躍されている皆さんは出身地がまちまちです。
ボランティアの出身地と自然観
松戸市への移住は、東京のもつ都市機能との関係による理由が多く、しかも自然との関わり方も共通して豊かです。
東松戸の森で取材に応じてくださっているボランティア皆さんの声や思いを何回かに分けてまとめています。
今回は、2拠点生活の実践者と森の魅力伝道者の話です。
森に親しみながら取り組むボランティアの保全活動は、ご自身のみならず市民生活にも潤いと安らぎをもたらしてくれています。
ボランティアの皆さんは、暮らしの中で自然豊かな森の営みをどのように受け止め、関わっているのでしょうか。
本稿では、東松戸の森で活動するボランティアの方々が、どのような自然体験を経て現在の活動に至ったのかを、出身地の違いと人生の歩みを手がかりに探ります。
定年後に見つけた“もう一つの居場所”
会社定年後、市教育委員会会計年度職員の特別支援員として12年間小中学校で仕事をしてきました。
職を離れ、「何か人の役に立つことができたら、いいな」と考えた時に、居場所を求めて「まつど里やま保全活動」に参加して3年目です。
松戸市に残っている森については、理解ある地主様のもと諸先輩メンバーを見習いながら活動しています。
私は、長野県の佐久・小諸市方面の出身で、いわゆる2拠点生活を実施しています。妻とともに地元へ定期的に通って野菜作りなどをして、特に夏季滞在時に食しています。
私の過ごした高校くらいまでの生活では、父親に付いて里山に入り、枝落としなどの作業を体験して自ずと道具などを使いこなすことをして技術を身に付けてきました。その体験が今日の活動に結び付き、支えられています。

現在、学校になじめず、ストレスを抱えている子ども達のことが課題になっている現実もあります。
野うさぎの森に来て、いろいろな遊びや作業体験した生徒達がイキイキと瞳を輝かせている様子を観察することがしばしばあります。
このようなことをより多く体験する機会を設けていくことが求められているのではないかと思います。
また、年配者と若者がともに活動をしながら、話す機会があればお互いにとって、とても意味があるのではないかなと感じました。
次世代に森を残すことも、成長の過程にある多様な子どもたちに自然の森で道具を使いこなす技術や過ごし方に親近感をもってもらうことも、重要な課題解決の糸口になるのではないかと考えています。<K・I>
森はあるだけで人の心を動かす
私は、新潟県の水田地帯が出身地で大学入学のため東京へ住まいを構え、その後仕事の場が葛飾区であったため、松戸に定住することになりました。
小さい頃は田んぼや川などでよく遊び、勤めに入ってからは仕事の合間に山登りをしていました。今でも、郷里にはいとこや兄弟がいますので、ちょくちょく里帰りしています。
会社定年後、広報を見ていた妻に「里やまボランティア入門講座がありますよ、このようなことが合うのではないですか」と勧められ、その気になって11期講習会に参加しました。
松戸市については、「こんなにも緑があるなんて思わなかった」ほどで、里山関係にあまり関心があるわけではありませんでした。
それでも、仲間の皆さん12人とスタートし、活動する中で11期代表を務めてきました。高齢化などの事情により現在では5人ほどになっています。
その状況で21期の人たちが近くの森を“足がかりの場に”と考えている時に何度か顔合わせをする中で、「お手伝いをしてもらえませんか」と協力要請しました。
そのような経緯で、森が未整備の状況もあり、やることがあるのも事実でしたので、入会してもらうことになりました。
ゾーニングの考えで森を整備することを進める途中でもあり、幸いにも世代のつながりも確保される好機になりました。

森の維持管理について考え方は人それぞれです。
だから森の在り方や維持管理の内容を決めるためには、皆が意見を出し合いそれぞれの意見を尊重する姿勢が必要だと思っています。
今、松戸市全体の活動をサポートしてくれている市と森の在り方について話し合う場を設けて様々な意見交換をしています。
私も参加していますが、「森は短期間では変わらない。長い時間をかけて活動し、木を育てる。2・3年で終わるものではない。『森づくり』は整備・公園化するだけではない。」との視点を持って意見を述べていこうと思っています。
そして「森を残すためにどうするか」「地主さんに負担をかけないためには」など、森の維持管理を任せられているので、やる気、気構えを大事にしたいです。
「都会の子どもは森に入ると、目が輝く。森があるだけでよい」と確か養老孟司さんが話しています。「森はあるだけで人の心に働きかける」と自分なりに解釈しています。
<余談>自分は紅葉林が好きなのでモミジを植えたい・・・。
そしたら、「1種類の木だけでは、ダメだ」と却下されています・・・。
笑いながら話していました。<S・K>
自然とふれあった記憶や体験、日常
昨今、K・Iさんのような2拠点生活は、脚光を浴びています。
一般的に生活リズムの変化による心身の回復や多様な人のネットワークづくり、地域文化の比較などのメリットがあげられています。
松戸市には台地と低地の入り組んだ独特の地形があります。
そのため“都市から自然の地へ”という環境変化は小さく、日常の延長で自然に触れられるのが特徴です。
ただ、森の体験を積んで来られた人にとっては、改めて郷里の森と松戸の森を行き来することで、植生の違い、森林管理の手法、地域の自然観・文化、里山の維持の仕組みなどを比較できる立場にあります。
まして、K・Iさんのように社会で様々な経験をされた方が取り上げている事柄は極めて貴重な提案だと受け止めます。
ストレスを抱えている子ども達が日常の暮らしと異なる「森の世界」を体験する機会です。
年配者に道具の使い方や植林による土いじりの仕方などを伝授され、空気の違うところでコミュニケーションすることの意義です。
世代間の交流する場を提供するとともに森の存在をつなぐことにもなります。
S・Kさんの言葉「森はあるだけで人の心に働きかける」にも力強いメッセージ性があると言えます。
子どもも、大人も、多くの人びとが森から受ける気持ちや感情、森に抱くイメージなど、心や精神の作用、働きについて触れられていると理解しています。
ストレスの有無にかかわらず、小さい子から若者・大人まで非日常の森を体験する意味はとても重要な機会だと考えます。
松戸の森は都市近接型で、「日常の延長としての自然」という強みがあります。
心身回復の質が大きく向上することや「森の姿がアピールする」ことのメリットがあります。
都市近接地における森のデメリットもあります。
この取材をさせていただいた日は、台風接近の前日(6/2)で定例活動日でした。
ミーティング直後の作業は道路沿いの下草刈りです。他で伐採された雑木の不法投棄が報告、確認されたためでした。
この事態への対処は、きれいに管理されている森をアピールし、「捨ててはいけない場にする」という前向きな姿勢を取ることが方針とされています。
その作業中に取材の機会をいただきました。メッセージを感じます。

松戸の森がつなぐ世代と記憶
今回は、東松戸の森を保全するボランティアの出身地と自然体験を焦点にしています。
お二人は出身地と松戸市を行き来されています。
その過程で自然とふれあってきた記憶、体験、日常について感じられた思いや考えを取材させていただきました。
都市近郊の松戸市の森で、子ども・若者・大人が自然に親しみ、年配者とともに森保全活動の技術や経験を通して会話する意味を強調されていることです。
松戸市の森が存在すること、維持管理すること、森をめぐって考えを述べ合うことを日常のこととして保全活動することを述べられていることです。
松戸の森は“日常の延長にある自然”です。
これからの取材は、森の保全活動をめぐってのことや、世代をどうつないでいくかなどをテーマにしてまとめていく予定です。
<石橋>

