東松戸の森づくり「各人の人生と地域の未来がオーバーラップする場所」

東京近郊松戸市の東部にある紙敷の森でボランティア活動をする人やその取りまとめ役をする人に何回かに分けてインタビューしています。
「活動を続ける中で“これは大事だ”と感じた時は何ですか?」
「活動の中で意識している“次世代へ配慮”することはありますか?」
東松戸(紙敷)の森が持つ意味
大都市・東京の近郊に位置する松戸市。その中にある「紙敷(かみしき)」は、市内のなかでも台地と低地が織りなす豊かな地形が特徴です。
住宅地と森の共存する景観が見られる東松戸地域の中核ゾーンです。
便利で快適な暮らしの反面、私たちは日々、過密な都市社会や複雑な人間関係のなかで、少なからずストレスを抱えて生きています。
そんな閉塞感のある都市空間だからこそ、森は人びとの心を変え、清々しい解放感をもたらしてくれます。
だからこそ、この緑を保全するボランティア活動の果たす役割は、極めて意義深いと言えます。
紙敷三つの森は、単なる自然や緑地ではありません。
「なぜ、東松戸の森が人びとの心を変えるのか?」
そのカギを握るボランティア活動の中でも、今回は取りまとめ役を担う代表に焦点を当てました。
どのような思いや心入れから活動しているのか次のテーマから取材しました。
<テーマ>
・世代つなぎの視点
・森の特徴を活かす

代表が語る「世代つなぎ」の心入れ
<S・Yさん 語る>
東京生まれ東京育ちの両親は2歳の私とともに北小金に移住してきました。
想い起こすと、当時は住宅地の周囲に山林や森、畑、田などがたくさん残っていました。
森に入って蛇に出会すこともありましたが、自然が大好きでたくさん遊んだ記憶があります。
小学生の頃には千葉大学の園芸学部に入りたいと言いましたら、ひどく反対された覚えがあるほどでした。
メンバーのみなさんは、それぞれに「里やま保全活動」への意識が高く、熱心に活動しています。
特に地主さんはご理解が深く、好意的な姿勢を取ってくださっています。
栗林の枯れ木拾いをしながらの取材を受けていますが、ここでも草刈りの練習をさせてもらい、時季には栗拾いもさせてもらえています。
とてもありがたく思い、感謝しています。
そのおかげで、メンバーは自発的に自分の好きなことや得意な分野でやりたいことをやっても、お互いに支え合うことができるみなさんで、調和がよく保たれています。

企業などで地域貢献の活動に資金援助の機会がありますのはよいと思いますが、それ以上にこれからは多くの人が少しでも自然と関わり合っていくことだと考えます。
枯れ枝拾い、草むしりからでもよいと思います。森の中に入って体験することが大事です。
先日、「森訪問」の打ち合わせに来た指導者の方が、サンダル履きに手足の露出した服装で来られました。
次世代に自然を引き継いでいくためにはその場にふさわしい、「グリーン作戦」として地域の自然を守り育てる環境保全活動を願っています。
訪問後の感想文を読ませてもらいました。とても内容に深みのあることが書かれていました。
様々な機会をつくり、多くの体験を積んでいけるように松戸の貴重な緑、森を引き継いでいきたいと思っています。 <S・Y>
<M・Iさん 語る>
いつも散歩をしている森沿いの道で、ボランティア活動を呼びかける張り紙が目に入りました。
「この森の中はどうなっているのか?」気になっていました。
連絡先の事務局に問い合わせて一日体験参加した事と、「オープンフォレスト」というイベントへの参加が 入会のきっかけでした。
入会してから数名の先輩の退会などもあり「代表をやってもらえませんか」の声掛けがあって今に至ります。
自身の役割は、当会の運営と『松戸里やま応援団』という組織と連携した活動を担当しています。
具体的には、2か月1回の里やま連絡会へ出席して、会員に年間行事、イベントの周知や参加などを事務局と分担しています。
私は山形県米沢市の出身で、実家の周りは畑と森に囲まれている環境で育ち、小さい頃から「芋煮会」等自然の中でのイベントに参加する事に慣れていましたので、抵抗なく森のボランティア活動に参加できました。
現在、会員は男性6人、女性9人の構成ですが、男性会員の高齢化が悩みです。
この森の特徴として、地主さんから畑をお借りできているため、近くの保育園児がジャガイモ•さつまいもなどの栽培•収穫の体験ができるのは、とてもよい教育的な意味があると思います。

これらを通して自然に親しむ機会を多く作っていきたいと考えています。
隣接する「野うさぎの森」や「みなみの森」と協力し、当森ならではの特徴を生かして子ども達の成長段階に応じた取り組みをして行きたいと考えています。
当森には江戸時代からの「石みやさま」と呼ばれる祠があり、大切に守られてきていることや、野馬除け土手跡があるなど、歴史や文化の名残が残っています。
森は最低限の手入れで、ありのままの自然を残すことも心掛けています。
<M・I>
森の特徴を活かした世代つなぎ
二人の代表に東松戸(紙敷)にある森を「どう次世代につなぐか」というテーマについて語っていただきました。
栗林の枯れ木拾いをするS・Yさんに取材しました。
まず、「地主さんの理解が深く、好意的な姿勢を取ってくださっています」を第一に挙げています。
地主さんと行政側の相互理解に基づいたボランティア保全活動が成り立っているからです。
都市近郊において、栗林という珍しい土地利用は、市民にとって魅力的な果樹園となっています。
ボランティアは森の維持管理を任され、栗拾いをさせてもらっています。
地主さんと市民とボランティアとの関係はそれぞれにメリットがあります。
このボランティア活動は市民と一体となった地域活動と言えます。
S・Yさんはこの関係に感謝の気持ちを表しています。
しかも、仲間のみなさんが自由な発想のもとで、活動の内容を決め、相互に助け合い、つながっていると述べています。
これまでに何度かにわたって取材・紹介したメンバー・スタッフの事例が物語ります。
この特徴のある「野うさぎの森」に代表のチームワークを重んじる姿勢に共感と協働の心入れが見受けられます。
森の「世代つなぎ」には代表は「枯れ枝拾い、草むしりからでもよい。森に入ることが大事」と語ります。
初めて「森」に入る人にとっては服や装備などが必要とされます。
都市生活に慣れた指導者には事前連絡や相談をしながら子どもたちへの配慮を期待しています。
「次世代に自然を引き継いでいくためのふさわしい」姿勢です。
代表は、安全意識や装備に対しての見方や“森に向き合う姿勢”を大事にしています。
「世代つなぎ」は、それらが『森づくり』の根幹と言えます。

もう一人の代表M・Iさんは「この森の特徴として、地主さんから畑をお借りできているため」と森と畑の併設を挙げています。
市立高校野球場脇の畑とその先に森があります。作業をする人や生い茂る樹々の森を間近に見ることができる自然環境です。
ここには日常の暮らしからすぐ近くに自然と接する機会に恵まれた「地の利」があります。
保育園児は小さいながらもジャガイモ•さつまいもなどの栽培・収穫体験を楽しめます。
周りの大人たちの世話を経て、食料を自分の手にして一緒に喜び合うことができます。
この教育的な意義を重視する代表の言葉からは、他の二つの森との連携を見据えた心入れが伝わってきます。
子どもの成長段階と各森の特徴を踏まえて、代表はこの身近な畑から自然に親しむ森への関わりを三つの森の体験から描いていると推測されます。
しかも「石みやさま、野馬除け土手など歴史や文化が残る」という森の特徴も挙げています。
代々の地主さんが古くから森を守り育てる営みで「祠」を祀りながら大切にされてきたことを引き継ぎたいとしています。
そのために「森は最低限の手入れで、ありのままの自然を残す」という考えを明らかにしています。

代表は会員構成の課題を悩みとして挙げていますが・・・。
取材をした女性会員の話にヒントが隠されているかもしれません。
「子ども・若い親世代を畑や森に呼び入れるイベント時に、作業をする中で興味や関心のありそうな方にちょっとした声かけをすると、複数入会してくださった」
と話しています。身近な誘いにそのカギがありそうです。
このような機会を通して、「世代つなぎ」はそれぞれ森の特徴を打ち出すことに意味があると考えます。
「各人の人生と地域の未来がオーバーラップする場所」
今回は「世代つなぎ」を視点に取材を進めてきました。
その中で二人の代表は、それぞれに「森を内側から支えること(信頼・安全・姿勢・基盤)」と「森の魅力を外へ開くこと(教育・連携・歴史文化)」の重要性を語ってくださいました。
そこに代表二人の活動への強い心入れが伝わってきました。
そのうえでボランティアの皆さんが築き上げてきた三つの森には各々特徴があります。
人びとの手が加わることで、駅近くの森は種々の樹木に彩られ、豊かな表情を見せています。
ここには先史時代からずっと続く「人と自然の関わり」が根付いています。
森の持つ古くからの美観こそが、現代を生きる人の心を変える力と言えます。
この魅力をアピールし、これまでの連携実績をさらに積み重ねていくこと。それこそが、地域の明るい未来像を開いていくカギと考えます。
東松戸の森は「各人の人生と地域の未来がオーバーラップする場所」になっています。
松戸市の「台地」と「低地」という特異な都市像が、今後『松戸ブランド』として広く注目されることを期待しています。
次回は、「森づくりと地域社会との関わり」を予定しています。
<石橋>


